肩関節疾患患者において
上腕の外側に痛みがある場合

どのように解釈していますか?

 

志水
みなさんこんにちは。志水です。
肩関節機能研究会の代表
運動器エコーカレッジのメンバー
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いきなりの質問でしたが、
肩関節疾患において
このような症状を呈した場合
どのように考えますか?

 

 

若手セラピスト
上腕外側の痛みといえばQLSじゃないのかな?
多くの人がこう思ったのではないでしょうか?
結論からいいますと…
それ"も"ある
と考えます。

志水
僕もこのQLSを知った時には…
「上腕外側の痛みは全部これだっ!」と思って
ひたすら小円筋とか大円筋に介入していた
苦い記憶が思い出されます^^;
この記事では
上腕外側部痛=QLSS(QuadriLateral Space Syndrome)
についての話も交えつつ

他の要素についても
言及していきたいと思っています。

QLSS

さきほど、いきなり
QLSSという名前が出てきましたが…

 

QLSSとは
Quadlirateral space syndrome(ク[ア]ワドリラテラルスペース)の訳です。

 

日本語にすると…

四辺形間隙症候群という名前になります。
ただ、あまり和名で使われることがないので
略してQLSSということが多いかと思います。

 

では
このQLSSについて説明する前に
まずは"QLS"について簡単に説明します。

 

QLSを構成するもの
・小円筋の下縁
・大円筋の上縁
・上腕三頭筋長頭の外側縁
・上腕骨の内側縁
となっています1)
イラストにするとこのような感じです↓

上記のイラストでも示したように

QLSの名称は…

  • 外側腋窩隙
  • 後方四角腔

 

といったように
複数の名称を用いられたりします。
(ややこしいですね)

 

そのため
QLSSを

⭕外側腋窩隙症候群
⭕後方四角腔症候群

と呼んでもいいのかもしれませんが…

あまり聞いたことがありませんので

和名では
"四辺形間隙症候群"とだけ覚えておけば
いいと思います。

 

そして、この隙間には以下の組織が通ると言われています。
  • 腋窩神経
  • 腋窩動脈・静脈
  • 後上腕回旋動脈・静脈

 

QLSSでは上記の組織が
QLSで絞扼された場合に症状が出現すると
されています。

そしてここで重要になるのは、
上外側上腕皮神経という上腕外側の皮膚を支配する神経になります。
→腋窩神経がQLSを通過したのちに分枝します。

 

"上腕外側の症状"というのは
腋窩神経が絞扼されることで

その後に分枝する
上腕外側上腕皮神経領域に症状が
出現すると理解されています。

※ココでいう症状とは
・疼痛
・知覚異常
・外転筋力低下

を示します。

また、QLSSは
外転外旋位や水平屈曲(水平内転)動作時などにおいて
腋窩神経が絞扼されることで症状が出現するものとされます。
(下図は外転・外旋位でのQLSが狭小化する様子をイラストにしたものです↓)

参考:整形外科リハビリテーション学会 編:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション上肢.34.メジカルビュー社.2008

 

このように
外転外旋位水平屈曲位というのは
投球動作時のレイトコッキング(コッキング期)や
フォロースルー期と同様であるため
投球競技において生じやすいともいわれています。

 

ですが、日常生活でも
同様の肢位をとることもあります。

例えば、右が患側であれば…
・運転席のシートベルトを取る際(外転外旋位)

・対側の腰や肩に手を伸ばすし際(水平屈曲位)

といった肢位においてQLSが絞扼されやすい
考えています。

 

あとは
動作に関わらず、
QLS部分の押圧にて上腕外側に症状が出現する
ということも一つの所見としておさえておくと
良いと思います。
(ここの実技は、いづれこちらに載せるかもしれません。)

 

このように
QLSSは上腕外側を支配する上外側上腕皮神経の障害(腋窩神経の絞扼が関与)により
生じるということを覚えておいてください。

 

ひとつの要因として。

 

では
次には肩峰下滑液包と上腕外側部痛について
考察していきます。

肩峰下滑液包

肩峰下滑液包には
自由神経終末が豊富に存在することを
知っていますか?2)

 

そして肩峰下滑液包は…

①C.3/C6神経支配3)
②肩甲上神経および腋窩神経が分布5.6)

という特徴があります。(以前はC5/C6支配だと思っていましたが、いろいろ調べると僕の認識違いでした…)

 

これらが
上腕外側の疼痛のポイントであると考えています。

 

では
もう少し深堀りをしていきます。

C3~C6支配神経(領域)

みなさんはC3/C6支配"領域"
聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

 

多くのひとは

"デルマトーム"

が思い浮かぶかもしれません。

このデルマトームのイラストでは
C3~C6までの支配領域の"なかに"「上腕外側」を含んでいる
ことがわかると思います。

 

そして
ラットの研究にはなるんですが
肩峰下滑液包はC2~C7・8支配をうける
と報告されています。6.7)

そしてこの図からも分かる通り肩峰下滑液包を支配している細胞数は、C3~C6が比較的多くなっています。

つまり、ここから考えるられることとして

 

関連痛の流れ
肩峰下滑液包が損傷

肩峰下滑液包を支配するC3~C6領域への痛みのインパルスが伝わる

収束投射説・収束促通説によりC3~C6領域へ疼痛を感じる

といった
考えから「上腕外側」に疼痛が生じる"可能性"があると考えています。

注意

この考えで今まで考えていましたが、いろいろ調べたり・考えるとちょっと微妙な感じが強いので、「話半分」で聴いていただければと思います^^;

 

肩甲上神経の分布

肩峰下滑液包は肩甲上神経や腋窩神経・外側胸筋神経がこのように分布するとされています8)

 

このイラストを見ると
肩甲上神経(suprasccapular nerve)と腋窩神経(Axillary nerve)は肩峰下に位置しています。つまり、肩峰下でのストレスが増えることでこれらの神経にも機械的(メカニカル)ストレスが加わることが予想できますよね?

 

QLSSか肩甲上神経か?

これについては

MMT整形外科的テストによって簡易的に見極めることができるかと思います。

というのも

QLSSは腋窩神経→三角筋・小円筋

肩甲上神経→棘上筋、棘下筋

となりますので

 

肩関節包

1)Cahill, B. R., & Palmer, R. E. (1983). Quadrilateral space syndrome. Journal of Hand Surgery, 8(1), 65–69.

2)Vangsness Jr., C. T., Ennis, M., Taylor, J. G., & Atkinson, R. (1995). Neural anatomy of the glenohumeral ligaments, labrum, and subacromial bursa. Arthroscopy, 11(2), 180–184. https://doi.org/10.1016/0749-8063(95)90064-0

3)橘田正人, 林省吾, 國田佳子, 浅本憲, & 中野隆. (2013). 肩関節包に分布する肩甲上神経知覚枝に関する解剖学的・組織学的観察. 理学療法学Supplement, 2012, 48100562. https://doi.org/10.14900/cjpt.2012.0.48100562.0

4)Shin, C., Lee, S.-E., Yu, K.-H., Chae, H.-K., & Lee, K.-S. (2010). Spinal root origins and innervations of the suprascapular nerve. Surgical and Radiologic Anatomy, 32(3), 235–238. https://doi.org/10.1007/s00276-009-0597-5

5)Ide, K., Shirai, Y., Ito, H., & Ito, H. (1996). Sensory nerve supply in the human subacromial bursa. Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 5(5), 371–382. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/S1058-2746(96)80069-3

6)落合信靖, 松浦龍, 佐藤進一, 杉岡佳織, 見目智紀, 西須孝, & 藤田耕司. (2009). 肩甲上腕関節及び肩峰下滑液包の感覚神経支配についての検討. 肩関節, 33(3), 591–594. https://doi.org/10.11296/katakansetsu.33.591

7)落合信靖, 見目智紀, 山崎博範, 西須孝, & 松木圭介. (2011). ラット肩関節拘縮モデルにおける感覚神経に関する検討. 肩関節, 35(3), 965–969. https://doi.org/10.11296/katakansetsu.35.965

8)Laumonerie, P., Dalmas, Y., Tibbo, M. E., Robert, S., Faruch, M., Chaynes, P., Bonnevialle, N., & Mansat, P. (2020). Sensory innervation of the human shoulder joint: the three bridges to break. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. https://doi.org/https://doi.org/10.1016/j.jse.2020.07.017

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